橋本のタワゴト

病院勤務の理学療法士です 日々の気づきや学びを記事にしてきます!

医療保険分野・介護保険分野に関わらず、対象者との会話は大事ですよね。
しかし、なぜ大事かと聞かれるとどうでしょうか。

雑談するためですか?
介入を円滑に行えるようにするためですか?
リスクを減らすためですか?
信頼関係を築くためですか?

答えはないと思いますが、自分なりの答えは持っておきたいものです。

私は病院に異動になり良く経験しているのが
患者さんから
「今日はしんどいけ、リハビリええわ・・・」
「歩きたくない!」
「筋トレやだ!」


病院という環境がそうさせるのか、
障害を負った精神的・身体的ストレスがそうさせるのかはわかりませんが
リハビリ(機能訓練)への誘いに消極的な声をよく耳にします。
そんな時に会話ってすごく大切だと感じます。

せっかく、時間をとって会話をするなら
最終的には「行動変容」まで繋ぐことができれば非常に有意義な時間になるのではないかと思います。


今回の記事はどうすれば「行動変容」を起こすことができるのかを解説していきます。




認知の歪みについて



行動変容を起こすためには認知の歪みを修正することが大切です

私たちは、常に環境(場所や組織・人・もの)に影響を受けながら生活をしています
その際に今までの経験や知識など、個人の持つフィルターを通して自動的に状況を判断し、
自動的に個々の対応をしています

スライド1


「挨拶したけど、返事がなかった」場合

そんな時の思考は
「嫌われているのかな?」
「何か変なこと言ったかな?」
と気にしてしまいませんか?

このような思考をしてしまうと
「嫌われている」という判断・認知をしてしまいます

しかし、挨拶への返事がなかったという事実だけで
自然と自分で解釈をしてしまっています

もしかすると、声が聞こえなかったかもしれませんよね

このように自分の解釈だけで思考してしまうと認知の歪みにつながってきます

この認知の歪みが生じてしまうと、見当違いの行動をとってしまったり
行動に移せなくなってしまいます
この認知の歪みを修正することが非常に重要になってきます



認知の階層性



認知の歪みを修正するためには
認知の階層性について理解しておく必要があります

認知の修正の対象となるのは自動思考、中核概念(スキーマ)と言われます
スライド2


階層性についてそれぞれ説明していきます

  • 自動思考

ある特定の状況で個人が思い浮かべる多様なイメージや思考、記憶などをいいます
人間の発達過程では様々な経験と解釈の蓄積から、考え方の一定の方向性と反応パターンに
習熟することで、物事に対する思考パターンが確立します

生活を送っていると次から次へと多くの事象が生じるため、こういった思考のパターン化や
オートマチックな表出は生きるために必須の能力です

例を挙げると・・・
自分の好きな音楽を聴くと、仕事が頑張れそうとなる場合があります
これはポジティブで通常の自動思考の例です

しかし、客観的にみてネガティブな自動思考の場合もあります
先述しましたが、挨拶をされて返事がなかった場合に嫌われていると
勝手に思い込むことも自動思考と言えます

  • 媒介概念(思い込み・ルール)


媒介概念は、認知の階層性の緩衝地帯のような位置付けです
最下層にあるスキーマは普段私たちが感じる範疇にありません

スキーマには、通常は向き合いたくない思考が存在しています
「自分はできないやつだ」「嫌われている」などなど

そういったスキーマに直接向き合いたくないために
媒介信念(ルール、思い込み)を作り上げます

「自分ができないやつだ」というスキーマを避けるために
「頑張らないと」とか「努力すれば報われる」といったルールや思い込みで
スキーマの影響を和らげようとします

  • 中核概念(スキーマ)


中核概念は思考する人が最終的に行き着く先の概念で、幼少期から全ての人に
備わっている「考え方のクセ」「かなり一貫した認知(思考)の構え」と
呼ばれています

スキーマは個人が持つ基本的価値観や人生観、過去の思い出や記憶といった
体験の積み重ねで構成されており、一朝一夕では変化しません

外部からの情報を処理するときもスキーマを通じて自分の理解しやすい情報を優先して
取り込む「クセ」があります

「自分はダメな人間だ」というスキーマが存在すると、
仕事で大成功を収めても、自分の実力と捉えることができず「たまたまの偶然だ」とか
「誰かに助けてくれたからだ」と思い込み、
いつまでたっても自信を持って仕事に取り組むことは難しいままです

だから、このスキーマに自分自身が気づくことが行動変容を起こす一助のなります



認知の修正に必要な「気づき」と「自己効力感」



前述していますが、個人の偏った考え方や判断によって認知の歪みが生じていることがあります
そのような時はきちんと現実的に確認さえしていれば偏った考え方や判断を回避できることが
多いと言われています

誤った信念の中に埋没し、ネガティブな思考の悪循環の中に入り込まないためにも、
自身の「気づき」が必要になります

そうした自動思考の背景には自己否定感に基づいたネガティブなスキーマが存在して
影響している場合があります

そこで必要になるのが「自己効力感」です
どんだけ、正しく「気づく」ことができたとしても
それを乗り越えれるという気持ちにならないと
行動変容につなげるのは難しいのではないかと思います

スライド3

自己効力感とは自己に対する信頼感や有能感のことを言います
人がある行動を起こそうとする時、その行動を自分がどの程度うまく行えそうか、
という予測の程度によってその後の行動は左右されます
つまり、「自分にはここまで出来る」という思いが行動を引き起こします

ある課題を与えられた時に、自己効力感の高い人は「やってみよう」と
思うことができますが自己効力感の低い人は「自分にはできないかもしれない」と
尻込みする傾向があります

行動を起こすためには、自己効力感という入り口を通過しなくてはなりません


気づきを促す方法



自分自身を客観視出来るということが重要になります
様々な物事を主観的だけでなく、第三者からの視点から捉えることで
客観的な見方を持つことができ、客観視できて初めて「気づき」が得られます

「気づき」という現象は、あくまでもクライエント自身が行う行為から得られます
「気づき」を得るための方法として以下の手段が考えられます

  • 認知行動療法

ソクラテス式対話法により、誘導的に「気づき」を促します
こちらに詳しく解説されています
  • ナラティブ・セラピー

治療者としてクライエントの対等性を基本にして、クライエントの自主性に任せて
自由に語らせることにより、単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで
幅広い改善を起こさせることを目的とするものです
  • リフレクション(省察)

ある主題に沿った振り返りを行うことで、その時点における自分の行為や結果などを
捉え直すことです
現在の客観的視点から考察できるためかなりの部分が「気づき」の概念に相当します


自己効力感を促す方法



自己効力感は主に以下の4つの因子によって形成されていると言われています

  • 達成体験

実際に自分で行動して、達成できたという体験のことです
これが最も自己効力感を定着させると言われています
しかし、課題の難易度設定には注意が必要で
課題解決できない難易度の場合は逆に、自己効力感の低下にもつながりかねません
  • 代理体験

他者が達成していること様子を観察することで、「自分にもできそうだ」と
学習することです自ら体験できる範囲は限られているため、この代理体験で得られる
自己効力感の影響は大きいと考えられます
講演会やセミナーに行くことで自分にもできそうと感じるのはこの代理体験が
影響している可能性がありますね
  • 言語的説得

他者から達成可能性であることを言語で繰り返し説得されたり、励まされたりする体験をすることです
しかし、言語的説得のみによる自己効力感は容易に消失しやすいと言われています
  • 生理的情緒的高揚

苦手だと感じていた場面で、落ち着いていられたり、赤面や発汗がなかったりする経験は
自己効力感が強められると言われています

自己効力感をもつためには、自分の行動は自分でコントロールできるという
自己統制感を持つことが基盤になります
そして、内的統制型と外的統制型との2種類に分けられます
  • 内的統制型

自分に起こることは自分の行動や態度の結果であると信じるタイプ
「自分の人生は他者からの影響よりも自分自身の信念で決まる」という
自立型の信念です
  • 外的統制型

運、不運、機会、影響力のある第三者の影響によるものと信じるタイプ
「自分の人生は自分の力ではどうにもならない、他者の意思や力によって左右されてしまう」
といった依存・従属型の自己統制感です

どちらの自己統制感のタイプが良い悪いというわけではありません
この自己統制感はその先にある自己効力感にも大きく影響しています
対象者の性格を位置付ける個別的な「ものの考え方」と「スキーマ」によって
形成され、影響し合って自己効力感の強さに影響します

クライエントがどのような性格・考え方なのかを知った上で対応することが大切になります


まとめ



長々と書いてきましたが行動変容に重要なのは
認知の歪みを修正することです

認知の歪みは、起こった事象に対して自分なりに解釈して偏った
考え方や思考になってしまうことが原因となってしまいます

次に客観的に自分の状況を把握して「気づく」ことが重要になり
「気づいた」後に「自己効力感」に応じて行動が変わってきます

つまり行動変容を起こすためには
「気づき」と「自己効力感」のバランスが重要になってきます!


参考文献





リハビリテーションのための行動分析学入門

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